せん妄による物忘れ

物忘れの症状を呈するもののひとつに、せん妄があります。せん妄とは、発熱や下痢による脱水や薬の影響などから、物忘れや意識混濁、興奮、幻覚や錯覚が起こるもので、高齢者によく見られます。

せん妄は物忘れ等の症状が認知症と似ている為、認知症と誤認されることもしばしば。しかしせん妄の場合は、短期間で回復して判断力や記憶力が戻ってくることがあり、その点認知症とは異なるようです。

せん妄は突然起きることが多く、表情を欠き、ぼんやりとすることもあれば、大きく興奮して騒ぎ立てることもあります。その他にも、「ありえないものを見たと言う」「話のつじつまが合わない」「意思疎通ができない」等の症状が見られ、周囲を困惑させます。物忘れでは、時間軸が混乱してしまい、今の日時が分からないといったことが多いようですね。

こうした症状は、悪化したり改善したり、短時間の内に変動しやすいと言われています。また当人にはせん妄状態の時の自覚がないことが多く、回復した後もその間の記憶がなかったりするそうです。

現在のところ、せん妄を確実に治せる治療法というものはないのですが、精神安定剤や適度な感覚的刺激を与えることで、改善する可能性もあります。精神安定剤によって、睡眠と覚醒のリズムを整えると、せん妄症状が軽快することが多いそうです。

また、視覚や聴覚、触覚への刺激が不足していると考えられる場合は、それらを積極的に補うと良いと言われています。ラジオを聞かせたり、目の悪い人にはきちんと眼鏡をかけて物を見るように促したりします。