物忘れとみょうがのお話

さて、物忘れといえば、日本には有名な言い伝えがありますね。「みょうがを食べると忘れっぽくなる」「みょうがを食べると馬鹿になる」というもので、地方によって多少言い回しが異なるものの、幅広い世代に浸透しています。

なんと、この言い伝えを元にした古典落語も存在しているのだとか。ある宿屋の主人が、宿に財布を忘れていくようにと、客にみょうがをたくさん食べさせた。ところが、客は財布ではなく勘定を忘れていった。という話だそうです。「みょうが=物忘れ、馬鹿」説は、少なくとも江戸〜明治の昔から、日本に息づいていたのですね。

しかし実のところ、みょうがで物忘れというのは全くの嘘。むしろみょうがに含まれる辛味成分等の働きで、脳が活性化するという実験結果も出ています。みょうがを食べると、脳の記憶や集中力を司る部分が、普段よりも活発に活動するのだそうです。

みょうがは物忘れを増やすどころか、どちらかといえば減らしてくれる食べ物だった訳ですね。では、みょうがを食べると物忘れがひどくなるという迷信は、一体どこから来たのでしょう?

最も有名な説は、「物忘れが激しいお坊さんのお墓から、みょうがが生えた」という逸話から、みょうがと物忘れのイメージが結びついた、というもの。

その他、「みょうがは香りを楽しむもので栄養には欠けているので、たくさん食べるものではない」という教えが変化して伝わったという説や、みょうがが大好きな人が独り占めする為に流したデマが起源、という説などもあるそうです。