仮性認知症

中年〜高齢者の方がうつ病にかかると、加齢による物忘れにうつ病の影響が重なり、物忘れがひどくなってしまうことがあります。これは本来認知症とは全く異なるものの、一見認知症のように思われることから、仮性認知症と呼ばれています。

仮性認知症と認知症を見分けるおおまかなポイントは、「物忘れの自覚の有無」と、「気分の落ち込みの程度」です。認知症では、患者に物忘れの自覚はなく、従って物忘れをすることへのショックや怖れも感じない場合が多いそうです。

また、認知症では「物を盗られた」といった被害妄想を抱くケースがあり、これも認知症と仮性認知症を鑑別する手がかりになります。その他、脳の画像診断や、抗うつ薬が効くかどうかも、判断材料となり得ます。

仮性認知症の場合、患者には物忘れをしている自覚があり、それについて深く悩んでいる人が多いです。うつ状態にある為、不安や焦燥感も非常に強く、孤立感に苦しむ人も少なくありません。

しかしそもそもの原因がうつ病ですので、うつ病の治療が進めば、それにつれて物忘れも改善することが期待できます。実際、抗うつ薬の服用により、回復が見られるケースが多いそうです。

ただ、中にはうつ病が治っても物忘れは治らず、仮性認知症から認知症へと移行してしまうケースもあります。また、「もともと認知症の一症状としてうつ状態になっていた」など、病態が非常にややこしいケースもあり、病気の鑑別・治療には相当の注意が必要なようです。